個人年金の利回りと税金の関係(所得税の税率ごとの利回りを比較)
個人年金保険とは
個人年金とはどういうものかをざっくり説明すると、毎月一定額を支払い続けると、20~30年後に契約で定められた一定額を、一括もしくは複数年に分けて受け取れる保険です。支払った額と同じ額しか受け取れないのでは意味がないので、支払った額よりも少し多めに受け取ることができるという契約内容になっています。
IRR(内部収益率)
契約している個人年金保険をこのまま契約し続けるべきか、それとも解約して他の資産に投資するべきか、この判断をするのに使えるツールとしてIRR(内部収益率)があります。以下の動画が、IRRについてわかりやすく説明をしています。
第122回 もうだまされない!個人年金保険の節税効果を考慮した「正しい保険の見極め方」【お金の勉強 初級編】
生命保険料控除
個人年金を利用すると、生命保険料控除を受けることができます。生命保険料控除には新契約の方式と旧契約の方式があり、平成24年1月1日以降契約の個人年金保険には新契約方式の生命保険料控除が適用されます。新契約方式の生命保険料控除額は以下の表のようになります。
年間の支払保険料等 | 控除額 |
---|---|
20,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
20,000円超 40,000円以下 | 支払保険料等×1/2+10,000円 |
40,000円超 80,000円以下 | 支払保険料等×1/4+20,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 |
年間の支払保険料等 | 控除額 |
---|---|
12,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
12,000円超 32,000円以下 | 支払保険料等×1/2+6,000円 |
32,000円超 56,000円以下 | 支払保険料等×1/4+14,000円 |
56,000円超 | 一律28,000円 |
控除を適用できるので、所得税や住民税を安くできます。例えば、年間の支払い保険料が30000円で所得税の税率が20%の人の場合は、所得税は(30000円x1/2+10000円) x 20% = 5000円
、住民税は(30000円×1/2+6,000円) x 10% = 2100円
だけ安くなります。税率の高い人ほど所得税の割引額は大きくなります。
個人年金保険(たのしみワンダフル)の例
先ほどIRRの説明で紹介したyoutubeの動画では、IRRは0.47%のため投資するには微妙という結論となっています。試しに、住友生命のたのしみワンダフルという個人年金保険ではどうなるのか調べてみました。
契約年齢 | 月払保険料 | 払込保険料総額 | 年金原資 | 一括受取率 | 基本年金額 | 年金受取総額 | 年金受取率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
30歳 | 1.5万円 | 540万円 | 約563万円 | 約104.3% | 57.41万円 | 574.1万円 | 約106.3% |
30歳から加入、60歳まで毎月15000円(全期間で540万円)を支払って、563万円を一括で受け取るか、574.1万円を10年間かけて受け取るか、のどちらかを選ぶという個人年金保険です。
一括受け取りの利回り
個人年金を一括で受け取った時の所得は、一時所得として扱われます。
一時所得 =(総収入金額-必要経費-特別控除額50万円)/ 2 = (563万円 - 540万円 - 50万円) / 2 = -13.5万円
となり、一時所得はマイナスとなります。そのため、一括で受け取ったときには一時所得に税金はかかりません。
この商品の場合、年金を一括で受け取るとIRRは以下のようになります。(IRRは、年間の支払いで計算しているので、月毎の支払いと比較して若干異なりますが、大枠ではそこまで変わらないと思います。)
所得税の税率 | 生命保険料控除前 | 10% | 20% | 23% |
---|---|---|---|---|
年間の所得税の割引額 | - | 4000 | 8000 | 9200 |
年間の住民税の割引額 | - | 2800 | 2800 | 2800 |
保険料支払合計額(生命保険料控除含む) | 5400000 | 5196000 | 5076000 | 5040000 |
一括受取額 | 5630000 | 5630000 | 5630000 | 5630000 |
IRR | 0.268% | 0.513% | 0.660% | 0.705% |
所得税の税率が20%以上の人ならIRRは0.660%以上となるので、0.660%という利回りに魅力を感じれば投資しても良いかもしれません。少なくとも、銀行の普通預金に比べれば利回りは良いのではないかと思います。資金は拘束を受けることになりますが。
年金受け取りの利回り
個人年金を年金形式で受け取った時の所得は、雑所得として扱われます。
雑所得 = 総収入金額 - 必要経費 = 57.41万円(基本年金額) - 540万円(払込保険料総額) / 10 = 3.41万円
となり、所得税と住民税が発生します。個人年金を受け取っている間の所得税の税率を10%に仮定するとIRRは以下のようになります。(IRRは、年間の支払いで計算しているので、月毎の支払いと比較して若干異なりますが、大枠ではそこまで変わらないと思います。)
所得税の税率 | 生命保険料控除前 | 10% | 20% | 23% |
---|---|---|---|---|
年間の所得税の割引額 | - | 4000 | 8000 | 9200 |
年間の住民税の割引額 | - | 2800 | 2800 | 2800 |
保険料支払合計額(生命保険料控除による還付込み) | 5400000 | 5196000 | 5076000 | 5040000 |
1年間の年金額 | 574100 | 574100 | 574100 | 574100 |
IRR | 0.305% | 0.437% | 0.552% | 0.587% |
一括受取の場合と比べると、IRRは低下しています。より高い利回りで運用できる自信があるのであれば、年金を一括で受け取って運用したほうが良いでしょう。(そもそも、そんな自信のある人は最初から個人年金に加入しないのかもしれませんが。)
まとめ
個人年金を利用するのであれば、
以上の2点を意識しながら、検討されたほうが良いのではないかと思います。
ちなみに、僕の入っている個人年金は、旧契約の生命保険料控除を受けるもので、年間の支払い保険料は15万円よりも少ないので、一括で受け取る場合のIRRは大体1.5%ぐらいとなります。昔はもっと利回りの良い個人年金保険が販売されていたそうですが、低金利・新契約の時代となってIRR値は大分下がっているようです。
参考リンク
- 個人年金保険にかかる税金の基本と最もトクする受取方法
- この記事では触れてませんが、保険料負担(支払)者と年金受取人が異なる場合に発生する、贈与税について触れられています。
- 利率が下降の推移をたどっている個人年金保険にメリットはあるのか
- 昔の個人年金の利回りはいまよりずっと高かったようです。