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所得税の計算方法(サラリーマン向け)

米株投資を始めて、ここ数年毎年確定申告をするようになり、以前よりも税金の仕組みに興味を持つようになりました。確定申告する時には、サラリーマンであれば国税庁の確定申告書等作成コーナーから源泉徴収票を元に金額を入力していけば申告用紙を作成出来るのですが、実際にどんな計算が内部でされているのか気になって調べてみました。

所得税の計算式

所得税は以下の計算式で求められます。所得税のしくみ|国税庁

所得税 = (収入金額 - 給与所得控除 - 所得控除) x 税率

以下、この計算式の各項目を説明します。

収入金額と給与所得控除

一般的なサラリーマンの場合、収入金額は会社から支払われる給与等の収入の総額、いわゆる年収となります。給与所得控除は、勤務に伴う必要経費です。会社が支給してくれるから必要な経費なんてないよと思う人もいるかもしれませんが、以下の表のように給与所得控除の額は収入金額ごとに設定されています。

平成29年分~令和元年分

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,800,000円以下 収入金額×40%
650,000円に満たない場合には650,000円
1,800,000円超 3,600,000円以下 収入金額×30%+180,000円
3,600,000円超 6,600,000円以下 収入金額×20%+540,000円
6,600,000円超 10,000,000円以下 収入金額×10%+1,200,000円
10,000,000円超 2,200,000円(上限)

No.1410 給与所得控除|国税庁

ちなみに、この給与所得控除の計算方法は令和2年分以降から以下のように変更されるそうです。見てわかる通り、年収850万円以上の場合の控除額が減っています。850万円以下も控除額が10万円減っていると思うかもしれませんが、後で述べる所得控除の基礎控除(No.1199 基礎控除|国税庁)の額が38万円から48万円に変更となるのでプラス・マイナス0となりトータルの収入金額に対する控除額は変わりません。

令和2年分以降

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,800,000円以下 収入金額×40%-100,000円
550,000円に満たない場合には、550,000円
1,800,000円超 3,600,000円以下 収入金額×30%+80,000円
3,600,000円超 6,600,000円以下 収入金額×20%+440,000円
6,600,000円超 8,500,000円以下 収入金額×10%+1,100,000円
8,500,000円超※ 1,950,000円(上限)

所得控除

所得控除は、控除の対象となる扶養親族が何人いるかなどの個人的な事情を加味して税負担を調整するもので、以下の種類があります。 所得税のしくみ|国税庁 所得金額から差し引かれる金額(所得控除)|国税庁

  1. 雑損控除
  2. 医療費控除
  3. 社会保険料控除
  4. 小規模企業共済等掛金控除
  5. 生命保険料控除
  6. 地震保険料控除
  7. 寄附金控除
  8. 障害者控除
  9. 寡婦控除・寡夫控除
  10. 勤労学生控除
  11. 配偶者控除
  12. 配偶者特別控除
  13. 扶養控除
  14. 基礎控除

最近話題のふるさと納税は「寄付金控除」、iDecoは「小規模企業共済等掛金控除」に入ります。会社の給料明細に記載されている厚生年金、健康保険、雇用保険は「社会保険料控除」に入ります。

厚生年金は月収や賞与に応じてその額が定められています。例えば、月収40万円の人は、等級では24となり、厚生年金の半分は会社が払ってくれるので本人の支払う厚生年金は37515円です。

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/ryogaku/ryogakuhyo/20200825.files/1.pdf

所得税の税率

所得税の税率は課税所得金額によって異なります。課税所得金額は、

課税所得金額 = 収入金額 - 給与所得控除 - 所得控除

となります。課税所得金額に対して、以下の所得税の税率を掛け算することで所得税の金額が算出されます。 No.2260 所得税の税率|所得税|国税庁

所得税 = 課税所得金額 x 税率

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え 330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え 695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え 900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円を超え4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

課税所得金額の計算式を見てわかる通り、所得税の税率は収入金額に対して適用されるわけではありません。課税所得金額に対して適用されます。 ということは、自分の収入は600万円だから、20%の課税となるわけではありません。課税所得金額を計算して、はじめて自分の所得税の税率がわかるわけです。サラリーマンで課税所得金額が695万円を超えて税率23%になる場合は、かなりの高収入ということになります。

課税所得金額が400万円の場合、税率は20%で控除額は42.75万円なので、所得税は以下のようになります。

400 x 0.20 - 42.75 = 37.25万円

なぜ、42.75万円を引くのかというと、課税所得金額のうち最初の195万円は5%の税率、195万円~330万円は10%の税率、330万円~695万円は20%の税率と計算されるので、5%の税率のものと10%の税率の分を引いているからです。

ですので、課税所得金額が400万円の時の所得税は以下のようにも計算できます。

195 x 0.05 + (330 - 195) x 0.10 + (400 - 330) x 0.20 = 9.75 + 13.5 + 14 = 37.25万円

税額控除と基準所得税

課税所得税に対して、所得税の税率を適用すれば所得税額を計算できますが、これがそのまま税務署に納める額となる人もいれば、所得税額からさらに控除出来る人もいます。

No.1200 税額控除|所得税|国税庁

基準所得税 = 所得税 - 税額控除

サラリーマンの場合であれば、外国株の配当による外国税額控除(米国株の配当はこれに該当)、基準を満たしたマンションの購入による住宅借入金等特別控除などで差し引ける場合があります。この税額控除は確定申告をしないと受けることが出来ないようです。税額控除は、所得税から直接引かれるので、控除のインパクトは所得控除よりも大きいです。所得税額から税額控除を差し引いた後の所得税額を、基準所得税額というそうです。

所得税の計算例

ここまでの内容を元に、所得税がどのくらいになるのか、年収別に計算してみたいと思います。ここでは、話を単純化するために全ての例で、納税者は30歳の独身、職場の所在地は東京都、生命保険や地震保険への加入無し、給与は毎月均等払いで賞与は無しとして、所得控除は必要最低限のものとなるようにします。大半の人はここで出す例よりも所得控除の額は大きくなって、所得税額はもっと小さくなるはずです。所得税の計算は年によって変わるので令和元年のもので計算します。

年収400万円の所得税

年収600万円の所得税

年収800万円の所得税

結果を見ていけばわかる通り、所得税の収入金額に占める割合(%)は、収入が増えるごとに高くなります。年収800万円の人は年収400万円の人と比べて、収入では2倍ですが、所得税では5倍以上を支払っています。 税務署の立場から見ると、800万円の人から確実に税金を徴収するほうが、400万円の人から税金を徴収するよりも5倍以上効率的に所得税を徴収できる形になります。より年収が高くなると、収入に占める所得税の割合はより高くなり、高収入の人からはより効率的に税金を徴収できるようになるというわけです。また、現在は東日本大震災からの復興のための施策を実施するために基準所得税額に対して2.1%の復興特別所得税が導入されています。

個人の方に係る復興特別所得税のあらまし|国税庁

この復興特別所得税2037年まで徴収が続くそうです。

住民税の計算方法はこちら

toripiyo.hatenablog.com